2011年1月3日月曜日

ブロッキングの重要な争点

民主党鳩山内閣の閣議決定時に重要な争点となった事項です。

1、法的根拠 ※「正当業務行為」、「緊急避難」はともに法律用語です。この争いは極めて重要!!!これで全てが決まる!

【国側の主張・・・正当業務行為説】

(1)特徴
憲法に定められた「通信の秘密」を全く守ろうとしない立場です。ブロッキングを正当業務行為として行えるという説です。基本的に、運用次第で、政府に都合の悪い情報を全て遮断することができます。ヨーロッパ諸国では広くブロッキングが普及し始めていますが、正当業務行為説のような危険な立場をとる国はありません。いかに、危険な立場であるかがよくわかると思います。ちなみに、中国はこの立場といわれています。

(2)ブロッキングの例
例えば、youtubeに流出した尖閣ビデオの閲覧を不可能にすることができます。それどころか、流出したこと自体を国民にバレずに処理できます。

例えば、2ch掲示板をブロッキングすることもできます。ご存知、2chは反中国の総本山と言われる掲示板です。そのため、親中派の政権にとっては憎い存在でしょう。それを簡単にブロッキングの対象とし、閉鎖に追い込むことができるのです。国側の機関である児童ポルノ流通防止協議会のメンバーであった元官僚は2ch閉鎖をにおわす発言をしていたことから、正当業務行為説をとる人は、2ch閉鎖の意図があるといわれています


【濫用を警戒する有識者側の主張・・・緊急避難説】

(1)特徴
①憲法に定められた「通信の秘密」を尊重する立場です。この立場によると、ブロッキングはあくまで「通信の秘密」という極めて重要な憲法上の利益を上回る利益を守るためにのみ認められることになります。具体的には、人の生命に危険を及ぼすような情報やそれに匹敵する重大な情報のみ遮断できます。

②この立場によると、児童ポルノは児童の生命を侵害するに等しいだけの重大な利益を侵害する情報にあたるため、児童ポルノに対してブロッキングを行うことが可能となります。

③この立場によると、ブロッキングの濫用や対象範囲の安易な拡大は憲法違反になります。そのため、どのような政党が政権を握っても、ブロッキングを濫用することが極めて困難になります。


(2)ブロッキングの例
・言うまでもなく、児童ポルノをブロッキングすることができます。

・今後、爆弾テロのようなものがおきた場合に、爆弾の作り方を書いたサイトまでブロッキングの対象を拡大しようという議論が起きることが予想されます。爆弾の作り方を書いたサイトは、まさに国民の生命にかかわるものです。それゆえ、対象を拡大して、こういったサイトまでブロッキングの対象とすることは可能でしょう。

2、各説への批判

【正当業務行為説への批判】

①国が厳守すべき憲法上の利益を極めてないがしろにしている。
②濫用が極めて容易になる。
③世界的な流れとして、ここまでのブロッキング規制は求められていない。児童ポルノのみを対象とすれば、諸先進国からの要請に答えることができる。
④緊急避難説が行う以上のブロッキングは、中国並の検閲になってしまう。
⑤対象範囲が無制限に拡大され、ISPの負担が億単位で増加する。そのため、極めて資金力のある大企業しかISPを運営できなくなってしまい、特定のISPが市場を独占することになる。

【緊急避難説への批判】

・削除要請をしても削除されないような場合にのみ児童ポルノをブロッキングできることになると思われるが、その間に児童ポルノが流通してしまい被害が拡大する。

←→緊急避難説からの反論:一時的に児童ポルノが流通する場合でも、児童の生命侵害に等しい被害を与えると考えることも可能。そのため、緊急避難説をとっても、削除要請前に遮断することは十分に可能である。